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Vol.42 Special Interview Beauty Vision MASAMI NAGASAWA

Vol.42 Special Interview Beauty Vision MASAMI NAGASAWA

そして今年、5年ぶりに開催される『東宝シンデレラ』オーディションの話になると、16年前のオーディション当時のことを彼女はこう振り返った。

「オーディションの朝に緊張し過ぎちゃって。“行きたくない。”ってなって、行くのやめようかなって本当に悩んで。でもまぁ、“なんとか頑張る。”とか言って、やっていたのを思い出しました(笑)。ステージに立ってからは全然緊張しちゃいまして、とりあえず早く帰りたい、早く終わってくれないかなって思ってやっていましたね。ですから、グランプリには、びっくりしましたけどね。本当に受かると思わないくらい何も出来ていなかったので(笑)。」

懐かしみながらも、昨日のことのようにその当時の心境を語る彼女から、長澤まさみらしい視点の言葉が返ってきた。

「16年前。あんまり今の自分と変わってない気がしますね。考え方とか、自分自身がもの凄く人間が変わったかというと、全然そんなことはなくて。元々のものは変わらないんだなぁって思いました。」

こんなにも成長を遂げ、日々注目されるほどの人気を集めている彼女から、それは意外に聞こえる答えだった。だが、変わらない考え方や人間性、それこそが16年前の35,153人の中から放っていた長澤まさみの輝き、魅力そのものなのかもしれない。

「昔は、今よりもっと気が強かったですけど(笑)。気が強いと言いますか、緊張してばかりで、恥ずかしがり屋で、初めて行く場所や初めて会う人とか、苦手だったんです。ですからこういった取材時のインタビュアーさんは、いつも困っていて。質問されても“うーん。”みたいな感じで、大変だったと思います。皆もう、どうにかこうにか喋らせようって大変だったと思います(笑)。でも、若い頃からこうして取材してくださるライターさんとかも、17歳18歳からの時からご一緒していると、だんだん顔見知りの人が増えて来て、そういう人達は“成長したな。”って思ってくれていると思うんですよね(笑)。多分、少しずつは変わっているのかもしれません。本当に良い意味で周りの人に色々支えられながらこの仕事を続けて来られていると思いますね。」

Vol.42 Special Interview Beauty Vision MASAMI NAGASAWA

恥ずかしがりで、緊張しやすかった。そんな少女が、作品に出逢うたび、役に出逢うたび、大きな経験をしてきたのだろう。多感な十代、それを乗り越えていくことは容易いことではなかったのだろう。辛い時期を彼女はどう乗り越えてきたのか訊ねてみた。すると、デビュー当時から考え方が変わらないと語る彼女らしい答えだった。

「いや、今も大変ですよね。やっぱり、毎回作品をやらせていただくことに大変はつきものです。」

いつでも誠実に役と向き合う彼女らしい言葉だ。

「昔は1つ1つの言葉に傷ついたりとか、なにかに一喜一憂していて、だいぶ言葉に振り回されました。でも、それで勉強になって、自分の肥やしになった部分って、沢山あります。ですから良い意味で大人になってきて、良い意味で肩の力が抜けて、適当になれた感じがします。今は、楽ですね、ここ数年(笑)。十代の頃は、子供で、思春期ですからね。多感な時期でしたが、そういった傷ついたりするような経験も、結局、女優や俳優の仕事は芸の肥やしになるんです。経験した全てが、芸につながっていくんですよね。ですから、それはそれで良いかなと思います。こういった楽観的なところも、ふとした瞬間に私はありますので(笑)。今は、その場の空気に身を任せて、やっています。歳を重ねることの醍醐味を感じますね。」

考え方は変わらない。だけれども、様々な経験によって感じたことが女優としての長澤まさみを成長させるのだ。そして彼女は女優の仕事の醍醐味をこう語った。

「うーん、女優。そうですね。伝えたいことは伝えたいと思えば伝えられるし、非現実的なことに自分も酔いしれられるし、術として、自分が何かをしたい、表現したいとか、全てを持っているのがこの仕事だから。辞められないんじゃないですかね(笑)。何でもやろうと思えば全てが叶ってしまうお仕事だから。不思議な仕事だなと思いますし、それと共に厳しい仕事だなとも感じますね。」

誠実に役者に向き合う彼女だからこそ、その仕事の厳しさがわかっている。そして計り知れないほどの責任の重さに応えているに違いない。

「昔はもっとこう、現場が楽しくなるようにとか、周りの事に色んないらない気を回したりとかが多かったのですが、今はもうお芝居することに集中するのが自分にとって先決と思えます。ですから現場では、何もないままにそこにいられるようになる、お芝居に集中というのが1番心がけていることかもしれません。女優として目指したいのは、何もしない女優です。カメラの前で何も自分を繕わずに、何もしないお芝居ができるようになりたい。結局それはどのお芝居にも言えますから、何もしない人になりたいですね。それはずっと昔から憧れています。そして芝居は、その時、その年齢でしか出来ないものもあると思うし、勢いとか生き様の全部が出て来るものですから、これから歳を重ねながら演じるものが観ている方がその世界に入り込んで、あっと言う間に終わっちゃったと思うような作品を作っていきたいです。」

女優長澤まさみが、これから魅せてくれるものがますます楽しみな言葉を聞かせてくれた。経験を重ね、歳を重ねるごとに、彼女たる演技がそこにはあるのだ。

「今、大河ドラマで草笛光子さんとご一緒させていただいているのですが、草笛さんは本当に少女なんですよ。私は“みっちゃん”と呼んでいて(笑)。そういうジョークも分かってくれる方なんですよ。凄く面白い方で大好きです。共演させていただいている女優の皆さん、年齢どうこうではなく、ずっと少女。子供っぽいねって表現は男性の方が多いと思うんですけど、女性もそういうチャーミングなところがあると思ったら、私は年齢関係なく、年上の人こそ「ちゃん付け」で呼びたいなって思いました。もちろん相手に対して、年上の方に対しての尊敬心は忘れないですけど、基本的には年齢で人を区別して接しない。するとその方も活き活きしてくれるから、そういうのって良いなって思いました。」

彼女の眩しいくらいの笑顔、そんなチャーミングな心を持っているからこそ、輝いているのだろう。

「同じ毎日でも見方を変えさえすれば、日々の出来事って、楽しくもなり、つまらなくもなると思います。だから私は最近趣味を増やして、視点を変えることで余裕を持ったり、楽しんでいます。何か1つ出来るようになるって、日常にプラスになりますからね。反対に危機的な状況にあった場合、まさにこの映画のようなパニックに遭遇したとしても人間って、火事場の馬鹿力って本当にあるのだそうです。人間は自分が思っているより、もっと伸びる生き物だろうし、私自身も女優さんをやっていて、それは常に感じることです。人生はやっぱり長いし、1つ何か成し遂げただけで終わる人生ではないですから。人生は続いちゃいますから、死ぬまで。そしたら何でも出来るんじゃないかなって、私は思うんで(笑)。」

今直面している壁も、越えられたとしても、たとえ何かで結果を残せたとしても、そこで人生は終わらない。死ぬまで人は生きる。成し遂げた先には、また越えるべき何かが待っている。そう、長澤まさみが言う通り、人は何でも出来る。限界を決めない彼女の生き方こそ、ヒーローに見えた。

長澤まさみ/女優

1987年6月3日生まれ。2000年第5回「東宝シンデレラ」オーディションで、史上最年少の12歳で35,153人の中からグランプリを受賞。2003年『ロボコン』(東宝)で初主演、同作で第27回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。2004年、映画『世界の中心で、愛をさけぶ』(東宝)で第28回日本アカデミー賞最優秀助演女優賞・話題賞など数々の賞を受賞。2005年映画『タッチ』(東宝)、ドラマ『優しい時間』(CX)『ドラゴン桜』(TBS)、2006年大河ドラマ『功名が辻』(NHK)『セーラー服と機関銃』(TBS)、『ラフ』などの話題作に出演。映画『涙そうそう』(東宝)においては第30回日本アカデミー賞優秀主演女優賞を受賞。多数の受賞歴を持つ、不動の実力派人気女優として常に注目を集めている。現在、NHK大河ドラマ『真田丸』に真田信繁の側室となるヒロインきり役で出演。この秋公開予定の、映画『グッドモーニングショー』、『金メダル男』にも出演。

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Ⓒ2016映画「アイアムアヒーロー」製作委員会
Ⓒ2009花沢健吾/小学館