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Special Guest

スペシャルゲスト

Vol.41 Special Interview ENDLESS POWER HIROSHI ABE

Vol.42 Special Interview Beauty Vision MASAMI NAGASAWA

Photo:Satoshi Miyazawa(D-CORD management) / PhotoManipulator:Satoshi Ozawa,Rika Imai(FIGHT CLUB CO.,LTD)
Hair & Make up:Yusuke Kawakita / Styling: Lambda Takahashi (Shirayama Office)
ネックレス200,000円/シハラ(ユイボックス 03-3486-1922) 4連リング(右手中指)37,000円、リング(左手薬指指先から)32,000円、88,000円/チーゴ(ミックステープ 03-5721-6313)その他スタイリスト私物

Life of Multi Color

「人生は長いですし、1つ何かを成し遂げただけで終わる人生はないですから。人生は続いちゃいますから、死ぬまで。」

女優 長澤まさみがOmosan STREETの今回の取材で、答えてくれた中で、その言葉は彼女の心の芯に触れたような、印象的なものだった。2000年の『東宝シンデレラ』オーディションで、12歳という史上最年少で35,153人の中からグランプリを受賞してから、16年。12歳の幼い少女の頃から、16年間で見て来たもの、経験してきたこと、感じとったこと全てがあるからこその言葉のように聞こえた。

長澤まさみが、迷うことなく、力強く語ってくれたこの言葉。“1つ何かを成し遂げただけで、終わる人生はない。”映画、ドラマ、舞台、毎回新たな役に挑み、何かをつかみ、壁を越え、その仕事が終わったとしても、人生が終わるわけではない。人間は皆同じく、死ぬまでその終わりなき日常を生き、彼女も成し遂げては新たな挑戦に立ち向かう16年間を生きてきたのだろう。眩しいくらいの笑顔、ゆるがない心の強さ、美しい逞しさ、女優 長澤まさみのその輝きのもとが、ゆったりと答えてくれるインタビューから、伝わってくる。春到来、スタートの季節。女優 長澤まさみの生きる姿が、終わりなき日常へ、エールのように聞こえて来た。

「ちょっと突拍子もない大きなキャラクターが出てくるから、面白くて好きですね。原作は好きで読んでいましたが、初めては凄く怖くて、1巻でやめちゃったんですけど、なんか後を引く感じがあったので、また読みました(笑)。」

長澤まさみが出演する、4月23日公開の映画『アイアムアヒーロー』の原作コミックを彼女は一読者として読んでいた。原作は2009年にビックコミックスピリッツ(小学館)にて連載を開始された、花沢健吾の大ベストセラー。退屈だけど平和な日常が、ある日突然、謎の感染によって変貌を遂げた生命体ZQN(ゾキュン)で街は溢れ、サバイバル・ワールドに変貌する。そのZQNから逃れ戦う主人公に大泉洋、有村架純、長澤まさみと旬の3人の共演も話題となっているが、さらに手加減しないサバイバル描写は早くも世界から絶賛され、世界三大ファンタスティック映画祭でもすでに賞をいくつも受賞しているほどだ。そんな作品で魅せた長澤まさみは役作りについて、こう語ってくれた。

「これまでも漫画原作に携わることはよくありましたので、原作読者ファンの人の期待とか、ファンの人が作っているイメージは、どうしても原作ものはあると思います。こういった作品の時は、見た目からも近づけようと心掛けますが、今回は見た目というよりは、漫画の中のつぐみという役柄の男らしさみたいな、強さの印象を大事にしました。」

そう、この『アイアムアヒーロー』では、長澤まさみ演じる藪(やぶ)こと小田つぐみは、勇ましく、諦めない、強い女性の役柄だ。ZQNと戦うアクションシーンは、切れのある動き、タフな長澤まさみを魅せてくれる。

「私は元々体力が凄くある方なので(笑)。運動神経も実はそんなに悪くないんです。ただ、これまでどんくさい役が多い方なのでそういった印象があるのかと思うんですけど(笑)。アクションは好きで、ずっとやりたいなと思っていたので、ちょっと触りみたいな感じで今回はアクションができて楽しかったですね。」

その言葉の通り、俊敏なアクションはとても気持ち良く、長澤まさみのアクションを共演者の大泉洋は“凄い長澤が観られる”と語っていたようだ。

「大泉さんの方が、カッコいいですよ。だいぶ二枚目の大泉さんが観られるんじゃないかと思います。でも今のNHK大河ドラマ『真田丸』でも大泉さんとは共演させていただいていますが、結構硬派な役を演じていらっしゃいますからね。私は、大泉さんの普通の、極々一般的な男子を演じている姿が好きです。面白い役を演じられている時も好きですが、それ以上に、真面目な役を真面目に演じられると本当にハマっていらっしゃるというか、そういうところが私は好きですね。今回も、この映画では、それが観ることが出来て、真面目な役の大泉さんは良いですよ(笑)。」

Vol.42 Special Interview Beauty Vision MASAMI NAGASAWA

今回の作品では、韓国の閉鎖されたアウトレットモールでのロケがかなりの迫力のあるシーンとなっている。謎の感染によって変貌したZQNの特殊メイクは、日本からだけでなく韓国の特殊メイクチームも参加。そのリアリティは、演じていた長澤まさみも、感動していたほどだ。

「今回、日本の特殊メイクチームもいらしたんですけど、半分くらいは韓国の特殊メイクチームも入ってくれていまして、世界でも活躍されている屈指の凄いチームらしくて、創り出して、生み出すZQNがリアルなんです。プロ意識の高さみたいなものを感じましたし、役者も韓国のダンサーの方でしたり、エキストラの方も韓国人の人が多くて、そういった方々と一緒に芝居をさせていただいて良い経験でした。意識も全然違っていましたので、刺激になって、楽しかったです。」

韓国のロケで経験した現場、特殊メイクの技術、現地役者との撮影はとても新鮮で、役者としての自覚、自我については、彼女にとって良い刺激になったようだ。

「特殊メイクはよりリアルに近づけていましたし、さらに芝居で雰囲気がリアルに近づけられるのも良かったです。現場は血だらけの演出で凄いことになっていましたが、そこで演じることが、とても楽しくて。もっとアクションをやりたかったですね。アクションチームと皆で力を合わせて、息を合わせないと上手くいかないので、そういったところが面白かったです。」

映画の中では、かなり過激なシーンだ。彼女の演じることへのタフさが伝わってくる。そして完成した作品を観ての彼女の感想は、よりこの映画の魅力を鋭く表現していた。

「本当に『アイアムアヒーロー』のゾンビのようなZQNの良さが出ていて、面白かったです。ゾンビたるや動きが遅い、鈍感みたいなところがゾンビの鉄則みたいなところがあるじゃないですか。ゾンビはこうだ、というようなゾンビ像みたいな。それをこう、突っぱねて、新しいゾンビ像のようなものを作ったのがこの作品ですから。わけの分からない行動を繰り返しているゾンビ達みたいなZQNが面白さだと思います。ゾンビが好きな人ってそういう映画に、どうしてハマるのかと、今回思って分かったのは、ちょっとホラーで“キャー!”というものよりかは、笑えるんですよね。可笑しいんですよ、ゾンビって。コメディ映画に近いと言いますか、その可笑しさが楽しみ方なんだと思いました。そして演じる側も楽しいので、やり甲斐がありますね。だから、面白いです。」

様々なジャンルの作品で、彼女が演ずるその実力は、演技派女優と言われるほど。その長澤まさみが、楽しいとまでに本気で向き合えたものだからこそ、この作品は“新感覚エンタテインメント”として、さらなる価値をももたらしたのではないだろうか。

「映画でもヒーローについての問いがありますが、私にとっての理想のヒーローは、飄々として淡々としてぼーっとしてる人(笑)。どっしりと構えていて、どんなことにも動じない。映画のシーンのようにパニック状況になったら、私は多分どっしり構えていて動じない人を見ると、ムカつくのだと思いますが、でも、“別に”みたいな感じが良いですね(笑)。この作品の中では、危機に直面するシーンが沢山ありましたが、戦い続ける為の真の強さに大切なことは、 とにかく“諦めないこと。”ですね。当たり前のことかもしれませんが、結局それに尽きると思います。そしてそれは、何事にも言えることで。諦めちゃうと全てが終わるんじゃないかなって思います。」

長澤まさみの凄さを感じる言葉を聞くことが出来た。“諦めると全てが終わる”、16年間、彼女はそうやって生きて来たからこそ、女優 長澤まさみがあるのだろう。