
スペシャルゲスト

『歌舞伎は通年通して舞台があるので、非常に短い期間に集中して稽古をしますが、今回の舞台「海峡の光」は、この稽古用に1ヶ月間スケジュールを空けました。今は、新橋演舞場でやってる舞台がまだ始まったばっかりだから、(取材時は2月上旬)花井のイメージは考えてないし、全然作っていません。ただ、何かこう、面白い組み合わせ…片桐仁さんはすごく人気ある方だし、僕は初めてですがSUGIZOさんもLUNASEAのギタリストで、それで脚本・演出は辻さんと、いろんな人がいるんで、これは今までにはない感じの面白いコラボレーションになるのではないかと思います。
辻さんの文章自体は結構、静かな感じなので、静かな舞台になると思いますよ。でも、ある意味このコラボレーションってロックで(笑)。静かな中に、熱い魂が描かれるような舞台になると思います。「アツイ!アツイ!アツイぜ!」っていう舞台ではないけど、静かな物語の中に熱い魂が存在するみたいな…そんな舞台になればいいと思います。』
常に新たな事にチャレンジする中村獅童のマインドが、花井という屈折した人物像を演じる事を望んだのだ。彼は舞台で常に新たな驚きを提供してくれる。「次はどんな事をやってくれるんだろう?」「どんな風に驚かしてくれるんだろう?」見る側もつい、ワクワクしながらそんな期待を抱いてしまう。そしてその観客の期待を肌で感じているからこそ、彼はチャレンジし続けるのだろう。
現代劇、映画、テレビドラマ…どこを舞台にしても中村獅童は色々な“企み”をもって、我々を驚かせてくれ、楽しませてくれる。常にチャレンジし続けるそのマインドは、生粋のエンターテイナーの証だ。しかし彼は単なるエンターテイナーではない。歌舞伎というバックボーンを何よりも大切にしている。
そもそも歌舞伎は、人とは違う派手な色柄の着物を着たり、秩序に反した言動をとる変わった男=“かぶき者”の姿形を真似、踊りに取り入れた「かぶき踊り」から始まっている。人を、“あっ”と言わせたり、驚かせたり、時には欺き、そして笑わせる。そんなエンターテインメントの真髄が江戸時代に始まり、実に400年以上の長い年月をかけて受け継がれてきた。今では“伝統芸能”と呼ばれるほどの永い、永い歴史を積み上げてきた。しかし、それほどまでに永い年月を受け継がれてきたにもかかわらず、未だ多くの人に馴染みがあるとは言いがたいのもまた事実だ。
歌舞伎を創る側も、その魅力をより多くの人々に伝えるべく、様々な演出を試みている。もちろん中村獅童も、そのひとりだ。彼は “伝統芸能”としてだけの歌舞伎に縛られている訳ではない。歌舞伎に関しても、様々な“企み”をもってチャレンジをしている。

『海外の人は10代の女の子でも男の子でも、自分の国の文化や歴史とかある程度のことに誇りを持って語ると思うけど、日本人はきちんと語れる人は少ないですよね。海外に行って、じゃあ「キミたちの国の歌舞伎ってどういうの?」って聞かれても、説明できない人がほとんどだもの。
海外に行った人は日本人としての自分を、客観的に見て、もっともっと日本人としての「感性を磨かなきゃ」って、思うだろうし今まで以上に“日本人”という自分を大切にするようになるのだろうけど、日本に住んでいるとなかなか見えてこないですもんね。
日本人は、海外に対しての憧れというのはみんな強いみたいで、海外のものをすごく上手に取り入れるけど、日本にいると一番大切なことが、なかなか見えてこない。今や、日本人より外国人の方が日本について詳しいですからね。(笑)』
『今、こうやって話しているみたいに、若い人たちに「歌舞伎ってこう」で、「俺はロックも好きだけどそういうのもあって…ファッションもそうだし」、って話すと、みんな「そうなの!?」って、のってきてくれるんです。色々な人に獅童ならではの“レクチャー”ではないけど、僕が様々な事を経験して、今まで生きてきたから、獅童だからこそ、獅童だからできる説明っていうのがあると思っています。
それをこれからも、もっともっと声を大にしてやっていかないといけないと感じていますね。
そして、まだ歌舞伎に触れた事の無い若い方々には、僕が出ているものを、最初に歌舞伎を観るきっかけにしてもらいたいな。(笑)。大半の人たちが実際に観たことがないと思うんですよね。やっぱりそういう若者が観てくれるようにならないと、演劇としての歌舞伎は滅びていっちゃうと思います。そういう興味のなかった人たちをいかにして振り向かせるか?っていうのが、僕、中村獅童の役割だと思うし、使命だと思っています。』
『僕は今まで歌舞伎以外の仕事もやってきているけど、でも根本は歌舞伎役者ですから、歌舞伎役者として、人とは違う活動をしてきたわけで、それがやっぱり獅童の個性だし、そういうものを“獅童流歌舞伎”としてカタチにしていくことが今後の自分自身の課題。古典も、もちろん守っていくんだけど、歌舞伎以外の仕事も沢山やるわけだから、役者としてはそこで培ってきたこと、そこで出会った人々、そういった方たちと新しい試みというのもどんどんチャレンジしていきますよ。
歌舞伎を観た事の無い人たちをターゲットにした、そういう人たちに是非観てもらいたい、楽しい企画っていうのは自分の中では考えているし、どんどんそういう人たちに喜んでいただけるようなものを作っていきます。
映画で出会った人、それから歌舞伎以外の演劇で出会った人、色々な方とコラボレートして新しい歌舞伎を来年…来年のちょうど今ぐらいに実際に形にできるよう頑張っていますので、ご期待ください。(笑)』

今は亡き十八代目 中村勘三郎は、驚くような斬新な演出や新作歌舞伎、Bunkamuraシアターコクーンでの、コクーン歌舞伎や浅草やNYで公演した平成中村座など歌舞伎座以外でも様々な演目を魅せてくれた。
また、野田英樹、渡辺えり、串田和美など現代劇の作家とタッグを組んだオリジナリティのある作品を次々に生み出し、歌舞伎を全く知らない人々を振り向かせてきた。そんな十八代目 勘三郎は、歌舞伎界で後ろ盾のない中村獅童が、様々な事に果敢にチャレンジする姿を見て深く興味を持ち、自身が企画する様々な歌舞伎に彼を起用した。
そして、中村獅童もまた、そんな十八代目 勘三郎の姿を間近で見続けてきたことでより一層、今の時代に生き続ける為の歌舞伎を深く考えるようになったのだろう。
『“歌舞伎”は自分にとっての全てですね。自分の居場所っていうんじゃないけど、日本という国で生まれて、日本に住んでいるじゃないですか。で、海外行って、いろんな刺激を受けたり、日本人として新たに発見することがあったり、僕にとってはそうですね、“歌舞伎”という国があってそこに僕が存在している感覚です。
“映画の国”であったり、“テレビの国”であったり、色々なところに旅に出て、その旅を通じて、また歌舞伎役者としての新たな発見があったりとか、海外に出て日本の魅力に気づくように、外に行って気付くことってやっぱりあるじゃないですか。そういうことと一緒。
歌舞伎は僕の“魂のふるさと”ですね。』
十八代目 勘三郎の姿を、遺志を受け継ぐかのような、強い気持ちが中村獅童の言葉の端々から感じられるインタビューだった。歌舞伎を“魂のふるさと”と考え、ベースである古典を大切にしながらも、ひとつひとつの舞台、役柄を確実に、そして新たな試みや様々なサプライズで観る者に喜びを与えてくれる中村獅童のチャレンジは、今後も続いていく。
そう、いつかクラスメイトが言った“歌舞伎はお年寄りが観る古典”という固定概念を覆す為にも。江戸時代、新しい驚きをもたらした歌舞伎のように、二代目 中村獅童は平成という時代に驚きのある感動を生み出し続けるだろう。

会場:よみうり大手町ホール(大手町1-7-1・読売新聞ビル内)
脚本・演出:辻 仁成
音楽:SUGIZO
出演:中村獅童 片桐仁 村川絵梨/青木玄徳 曽世海司 佐藤洋介 水野愛子 玉城裕規 前内孝文 明石鉄平
諸橋幸太 小早川浩一 俊藤光利v 横山一敏 勝矢
お問い合わせ:サンライズプロモーション東京 0570-00-3337


















