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Vol.30 Celebrities The Artist 役者という、芸術家。 JOE ODAGIRI

Celebrities The Artist JOE ODAGIRI 役者という、芸術家。

Photographer:Akiko Sameshima(nomadica)/Hair&Make up:Yoshimi Sunahara/ロングトップス 47,250円 ROGGYKEI/XANADU TOKYO (03-6459-2826)、ノースリーブ 21,000円 Line/THE WALL SHOWROOM (03-5774-4001)

深夜枠にしかできない、ドラマづくり。

4月18日からスタートの主演ドラマ『リバースエッジ 大川端探偵社』は、浅草が舞台で、普段、自分が全然行かない街なので、いろいろなものが再発見できて楽しかったですね。“日本には、まだこういう雰囲気が残っているんだな”とか“こういう人達がいてくれているんだな”とか。とても日本らしさを感じましたね。古き良き日本を。
都会に住んでいると、ただ仕事をして、ただ無機質に時間だけが過ぎていくような気がするのですが、浅草には都会の生活であんまり触れないようなものが、沢山残っていて、すごく懐かしい気持ちと、人間的に何か戻されたような感覚がありました。日々を誰と、どういう時間を過ごしたかを大事にしているような、浅草の人達とお話しすることがロケ中すごく面白くて。ここまで人間同士の繋がりを残してくれているのは嬉しいなと思いましたね。
このドラマも、混沌とした現代社会、あまり人と人とのふれあいがなくなっている中で、一つの調査を通して人間関係に温かみを見いだしていく内容のものです。この作品に出てくる依頼者達はとにかく個性的で、変な引っかかりを持っている人たちばかり。その人たちの心のとげを大川端探偵社が抜いてあげるというか、解決するのですが、依頼者は毎回超個人的な、性癖みたいなものに近く、「何でそんな事をわざわざ…」と思うものばかりです。
しかし実は、どの依頼者にも共感出来るものがあるんですよね。触れなければ、それはそれとして人生は何も影響もなく進んでいくような、どうでもいいとも言えてしまう調査内容を、わざわざ探偵事務所に相談にやってくる。そういう依頼者をいつのまにか可愛らしく感じ、すごく人間的で魅力に感じます。

このドラマは24時台の放送なので、深夜枠。プロデューサーからもこの時間帯でしかできないことを共に作りたいとお話しをもらって、その熱意に心が動かされました。いわゆるゴールデンタイムといわれる時間のドラマは、メジャーな時間帯ゆえ、わかりやすいものが必要になってきます。時には視聴率の為にストーリーを無理矢理ねじ曲げたりもする。自分には本質的に合わないんですよね。相容れないというか。もの作りにこだわればこだわるほど、僕のやり方ではメジャーなところでは勝負はできない。こだわりを発揮できない。自分自身、やっぱり納得出来ないんですよね、単純に。
だから今回のドラマで、プロデューサーから自由にこだわったものを一緒に作りませんかというようなことを言われたのが、大きかったと思います。心を動かされましたね。

15年目の、オダギリジョー。

今年でデビューして15年?だいぶイイ感じになってきました。力が抜けて来たと言うのか。理想的なスタンスに近づいて来ていると思います。簡単には説明できないですけどね。少し硬い話になっちゃいますけど、僕は俳優業、演ずることは、エンターテインメントである以上に、芸術だと思いたいんです。でもこういう仕事は、ビジネスじゃないですか。やっぱり若い頃は、そのビジネスとアートを混同できなくて、イライラしていたんです。自分の意に反して、引っ張られることも多かったんですよね、ビジネス側に。だけどようやく、“数字や人気が欲しければ他の役者に行ってください”って言える立場になれたというか、周りもあいつじゃビジネスにならないと気付いたんだと思います(笑)。
イライラとぶつかり合う事も少なくなり、肩の力を抜いて仕事に向かえるようになった気がするんです。デビュー当初からこだわりは強かった。でもどうしてもそれとは違う仕事をしなきゃいけないことも多くて。正直納得がいかない仕事もありましたが、今は自分で納得のいく作品だけと向き合えて、よりこだわりを持ちつつ、余計な仕事はしなくていいという考え方なので、そういう意味で理想の俳優像には近づけていると思っています。

僕は、個性とはその人その人の出し方があっていいと思うんです。捉え方というのか、表現の仕方というのか。僕にとって芸術と個性は同意語で、それを突き詰めていきたいというか、こだわっていきたいんですよね。仕事の話に戻すと、オファーを頂いて先ず最初に考える事は、自分がその台本に興味を持てるかどうか。好きか嫌いか。読んで面白いと感じられるかどうかだし、もし面白く感じないのなら、オダギリジョーという役者にこういう作品に出て欲しくないと思うのは、自分なんですよ。結局、自分が自分のファンとしてというか、セルフプロデュースしながら決めるしかないんですよね。
もちろん、この監督とやりたいということから作品に入ることもありますが、でもやっぱり、根本は自分に恥ずかしくない仕事をするということですね。

オダギリジョー

好きなものを、自分の一番大事なところに置いておく。

そんなこんなで、自分がやりたいと思える作品しかするつもりがないんですね。ここ数年、そういう仕事の決め方をしてきましたし、これからも変わる事はないと思います。でもそうするには生活が厳しくなるじゃないですか、気持ちが乗らなきゃ働かないってことですから。だから何か他の仕事をしなきゃいけないかなぁと思っています(笑)。
楽して儲かるものってないでしょうか(笑)?まぁ、少々大袈裟な話ですが、他に生活出来る安定した収入があれば、お金の為に芝居をするっていう考え方すら必要としなくなる。仕事、ビジネス、お金儲けとして、芝居をするって事がゼロになる。そうすれば、もっと突き詰められるじゃないですか、役者業を。そうなれば完全に趣味の延長のように、芸術として携わるんじゃないかと思うんですよね。俳優というもの、演技というものを大事にしたいからこそ、安売りしない為に、何か他で楽して儲かればいいのになぁと1人勝手に希望を持ってはいるんですけれどね(笑)。

僕は二十歳の頃、自分勝手にアメリカに留学して、本当に痛い目を見て帰って来ました。大学で芝居を学んでいましたが、言葉も十分でなく、シェイクスピアや古典芸能みたいな物への知識もなく、毎日毎日辛く逃げ出したい気持ちでいっぱいでした。でもそれが“悔しかった”という経験として残っているから、今でも俳優業をやっていけている気がするんですよ。
“悔しさ”があるから、今の自分がある。留学していた時は、人種が違うという事で、白人社会にもまれるということもありました。アメリカという自由を代表している、資本主義を代表している国の裏側のようなものも感じました。希望だけじゃない…要は希望を持って行っているのに、それを打ち壊されることが多かったんですね。
向こうで経験したことは幸せなことばかりでないんですけど、でもああいう経験をしたからこそ得たものが多かったし、若いからこそ飛び出したっていうのが今の財産になっているのは事実です。だから、10代、20代という若い頃は、何でもいいから自分の好きなことを深めるためにとにかく行動していくっていうことは大切な気はするんですよ。

現代の10代や20代は、その好きなものを探すのが難しいみたいですね。でも、好きなものって誰にでも絶対あると思うんですよ。僕もそうですけど、好きなもの…俳優っていうか…表現みたいなものの為に、人生の8割を我慢している。そう思いますね。それが僕のプライドなんだとも思います。僕の場合は、好きなものを職業にしてしまったから、理想と現実(芸術とビジネス)に苦しい思いをする事も多かったんですね。だからこそ今は、好きなものを究極の趣味にするために、簡単に儲かるアルバイト(笑)を探したい。生活できるだけのお金さえあれば、好きなことのために追求し続けられる。
どっちにしても大切にしたい好きなものを、自分の一番大事なところに置いておくというか、持っておく。僕はそれがないと生きていけない気がするんです。そういった想いを押し殺す必要もないし、諦める必要もない。どんなカタチでも、好きなものは追えると思うんで、無理せず、自分を信じてあげるのが一番良いと思います。

オダギリジョー

ドラマ24「リバースエッジ 大川端探偵者」 主演:オダギリジョー×脚本・演出:大根仁(「モテキ」「まほろ駅前番外地」)

4月18日スタート! 毎週金曜日深夜0時12分 テレビ東京系列
原作「リバースエッジ 大川端探偵社」
ひじかた憂峰 作 たなか亜希夫 画(『週刊漫画ゴラク』連載中 日本文芸社)

東京・浅草の小さな探偵社に舞い込む不可思議な依頼の数々…。複雑な人間模様が渦巻く混沌とした
現代で紡ぎだされたのは、懐かしく、ほろ苦い、人間味あふれる物語。テレビ東京のドラマでの主演は今回が初となるオダギリジョーは、大根監督とタッグを組むのも今回が初。深夜ドラマの新たな傑作の誕生です。