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Special Guest

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Vol.32 Vol.32 Special Interview The DREAM Will Continue With Challenge KIMIKO DATE-KRUMM

The DREAM Will Continue With Challenge KIMIKO DATE-KRUMM

Photo Yuji Ono (nomadica) Hair & Make up Takashi Kosuge (coque) Styling Maiko Nishio

SUPER SPIRIT OF ATHLETE

“Challenge!”この言葉を一瞬一瞬、誰よりも大切に楽しんでいるのは、彼女に違いない。日本はもとより、世界で注目されている女性アスリート、テニスプレイヤーのクルム伊達公子。’95年世界ランキング4位に上りつめながらも、翌年26歳の若さで惜しまれながら引退した。そして11年半経った’08年に現役復帰後、韓国オープン優勝、東レPPOでマリア・シャラポワらを打ち破るなど目を見張るほどの活躍を成し遂げる。
現役復帰から7年、クルム伊達公子は、世界が拍手喝采を贈るほどファーストキャリア以上の輝きを今放っている。
しかも歳を重ねるごとに、テニスのプレーはもちろん、彼女の情熱は観る者を魅了し続けているのだ。

2020年、東京オリンピック・パラリンピックがこの表参道、青山の街に帰ってくる。OmosanSTREETでは、地元で開催される6年後のオリンピックを今から楽しむために、テニスプレイヤーのクルム伊達公子にフォーカスを当てた。
きっと、彼女を知ることは、スポーツの真の魅力、そして挑戦し続ける心を知ることができるからだ。クルム伊達公子、彼女の“Challenge”にたっぷり迫った。

ウィンブルドンが終わってつかの間の帰国。幸運なことに、短い帰国中での取材に、彼女はOmosan STREETに時間を作ってくれた。都内某スタジオに彼女は、満面の笑みで現れた。
その姿は、コートでの勝負師、クルム伊達公子ではない。終始笑顔、可愛いという言葉がスタッフから出るほど、チャーミングなのだ。そしてインタビューがはじまると、自分の思いを真っ直ぐに語ってくれた。

「復帰して今年で7年目、最初は本当にここまで、WTAの世界のレベルで戦うつもりもなかったですし、戦えるとももちろん思ってもみなかったし、まさか6年もやると思ってもいませんでした。
最初1年やる中で、日本の選手の刺激になればと思っていましたが、皆から刺激どころじゃないって言われて(笑)。思った以上の結果も出ているので、私自身の気持ちも刺激を与えるっていうことよりも、自分自身の“アスリート魂” が出てしまって、どちらかと言うと、自分で戦う方が強くなってしまいました。
それと同時に当然、日本の若い選手達が育ってこないと日本の女子のテニス界も明るくないので、それはそれとして、強い想いは変わらず持ってはいるのですが…。じゃあ、果たして“何が出来る?”って言ったら、今は実際その日本人と触れ合う機会というのが、本当に限られた人、同じ場所にいる数人しかいないので、多くの日本人選手と触れ合う時間というのは ほとんどなくなってしまいましたね。最初の一年の、半年分ぐらいだけでした。
だから、そういう意味では、形は変わってきてしまっていますね。」

彼女が世界で戦う姿、果敢に挑み続ける事は、若い選手はもちろん、世界のテニスにまで刺激を与えている。
そんな彼女を駆り立てる“アスリート魂”は、どこからやって来るのか。彼女の率直な思いを聞いてみた。

「うーん、一つには、そのカラダを動かす事がものすごく好きなのですね。やっぱりスポーツは好きだし、当然テニスも好きなので。だから、コートにいることは、若い時はあまり好きではなかったのですが、今は練習が嫌いじゃないのですよね。トレーニングも嫌じゃないです。
だから、情熱っていうか、そこに居る事が自然というか。一番自分が、自然でいられる場所なのかもしれないですね。
だから、何かこう自分を奮い立たせて、テンションやモチベーションを上げなきゃとか意識しなくても、そこに居ると自然とそういう気持ちになって、持続出来ているのです。

幼い頃テニスを始めた時から、凄くテニスが好きでしたが、今でもやっぱり楽しいです。まぁ、高校生の時はそう思わなかった時期もありますし、プロになって怪我をしたり、勝てない時があったり、そう思わなかった時期もあったのですけれども。一回引退をして、テニスから離れてみて、完全にテニスに触れることもなく、見ることもない時期ももちろんありました。でも、そういう時間もあって初めて、自分はやっぱり凄くテニスが好きなのだな、っていう事にも気付かされるようになってから、昔以上にテニスを素直に好きって言えるようになった部分はあると思います。」

 KIMIKO DATE-KRUMM

テニスが好き。テニスをすることを心から楽しんでいる。ただ、世界で戦うのは楽しいだけでは、クルム伊達公子をここまで強くさせないだろう。世界のトッププレイヤーと戦い続けられるメンタルは、どんなものなのか。
トッププレイヤーのメンタルとは?世界4位、トップ10を経験している彼女のその言葉とは?

「一つには、勝負にこだわる気持ちは必要です。負ける事に慣れちゃうというか、負ける事に何とも思わなくなる時には、トップにはいけないと思います。トップにいく人と言うのは、本当に負けず嫌いだし、やっぱり凄くライバル心も強い。何が何でも自分が一番になりたいっていう気持ちが誰よりも強い人が、やっぱりトップにいくのです。
そういう気持ちは、表に出す出さないは別にしても、強く持っていないと、居られる場所ではないですね。日本の中に居ると、私は負けず嫌いと言われますが、世界にいくと、私なんて可愛いものです。
私の負けず嫌いは、世界にいけば下の下です。引退前と今、勝負に対する気持ちの違いは、今はある意味自分でその負けを受け入れて、納得させる為に自分で自身の中で、色々な理由を探そうとしますね。

昔はそんなことは絶対なかったです。今は受け入れなくてはいけないことは、受け入れるようにしています。実際の年齢はただの数字とは言えども、やっぱり現実コートに立って、私の歳の半分以下の若い子達と向き合う現実の中では、もうちょっと力があれば、もうちょっと3歳でも若ければって、常に思っています。
それを言っても始まらないので、思う気持ちは沢山ありますけれども、実際それを受け入れて、その中で出来ることを探すしかないな、と思っています。
ある意味、開き直りじゃないけれども、どんと構えるしかないのかな、っていう気持ちですかね。」

歳を重ねて進化をし続ける彼女は、吹っ切れている心があるからなのだろう。では勝負強いメンタルは、実際の試合ではどんな気持ちで挑んでいるのだろうか。ポジティブな気持ちで居続ける秘訣はあるのだろうか。

「ゲーム中は、もう本当に色々な事を考えるのですが、当然一番大事なのは、良いイメージだけを持って、ネガティブな事はあまり考えないようにしています。でも、考えるのですよ、どうしても。考えちゃうのですけれども、それよりも上手くいく事のイメージばかりを、自分に繰り返して、思い続ける。そして、やり続けるしかないですね。自分に言い聞かせる。その繰り返しです。
若い時から、うまくいかないとか、調子が良くない時なんかも、やらないで後悔するよりも、やって失敗してでもやった方が良いっていう事はわかっていますから。だから、もうできるだけ良いイメージを持って、それを失敗するのが恐いからやらないのじゃなくて、例え失敗してでもやって後悔をする方がまだ受け入れられるだろうと。

あと、私の場合、相手のミスを待つとかじゃなくって、自分がエースを取りに、自分が決めにいくっていう方向にいくので、待っていられないのですよね。時には、待つことが必要な時もあるのだろうなって思うのですが。
勝ちたいという気持ちもそうですが、やっぱり上にいく選手っていうのは、才能はもちろん皆それなりに持っている。才能を持っていて、でもその才能には必ず、その才能だけじゃなく、継続してやり続ける努力を惜しまない人はやっぱり上にいきますよね。」

その努力を惜しまない毎日を、クルム伊達も送っているひとり。彼女の24時間は、全てテニスの為に動いている。
時々、子供みたいな生活をしていると思うと言う。食べて、動いて、寝て。その繰り返し。生活のサイクルがテニス中心の今、寝ることも含めて重要な事なのだ。