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Vol.43 Special Interview Colors of the Heart GO AYANO

Vol.43 Special Interview Colors of the Heart GO AYANO

綾野剛は2年前に主演男優賞を7本も受賞している。その功績についても、ターニングポイントではなく、通過点でしかなかったとも語ってくれた。ただ、その時に経た自分の感情や、周りのスタッフ、各関係者に対しての感謝の気持ちは、どんどん大きくなっていったと言う。

「今、僕はずっと変わらずに自分の大きい表題として持っているものは、未来に自分の身体を預けるわけでもなく、過去に預けるわけでもなく、今、現在に自分の身をちゃんと投じる。ですから、今日だったら、九州では今も大変なことが起こっていて、僕は取材を受けている。でも、ここに来てくれた方々。まず、その瞬間にやっぱり僕が立ち会っているわけで、自分の時間を投資しなければいけない。自分の言葉を尽くし、ちゃんと敬意を持って向き合いたいんです。それはずっと変わっていなくて。5年、10年後どうなりたいかは、僕にとって愚問で、想像できるのは死んでいる可能性くらいしか想像がつきません。やっぱり“死”は、自分から向かって行くものではないですが、来るものなので。今日までこうして生きて来られたのは、単純に感謝しかないし、奇跡だと思います。人として生き続けるということ、それまでに出逢った人々、人生は人だと思っていますので、そこにどういう想いを馳せられるか。色々な災害がある中でも、自分ができることは“エンタテインメントを止めない”と言うことだけです。自分たちは被災された方達の感情には太刀打ちできない立場にいます。辛いニュースが流れている中、被災された方が少しでも、避難所でも笑いたいんじゃないかな?ドラマが見たいんじゃないか?そして、それを届けられるのは、テレビや映画のエンタテインメント。そこに喜びを感じられる瞬間が、必ずあると思うんです。」

“今”を“瞬間”を、ちゃんと見つめる。そしてこの瞬間瞬間を、瞬間の連続を生きて行く。綾野剛の“今”への思いは、芝居を始めた日から、変わっていないのだろう。絶えない出演のオファー、撮影の日々。こんなにも引っ張りだこの俳優を世間は、さらに追いかけ続ける。売れて行く反面、歓声も罵声も受けるのだろう。プライベートもあってないようなもの。それでも、走り続ける綾野剛の原動力は、何なのか。

「自分の原動力は、誰でもない誰かが、少なからず何かしらの夢や希望や何か目的を見出すきっかけになる。大きいことを言うと、この国の文化、この国における最良の作品を世界に届けたい。日本の映画シーンというのは何も衰退していないと思いますし、素晴らしい作品っていうのは山ほどあります。たまたま表に出ていない作品もありますし。だから、何が起ころうとも、相対的テーマに諦めずに向き合い続けられるかってことだと思いますので、生きている限りそれはやれたら良いですね。」

Vol.43 Special Interview Colors of the Heart GO AYANO

綾野剛は、いつだって表現を諦めない。芝居を始めたその日から、彼はそう生きて来た。

「何が必要かって言ったら、センスとかアイディアだとか、その人、個人個人の能力もありますが、だけどやっぱり、一つ明確な答えが出ているのは、昔からそうなんですけど、努力が一番の近道です。一番遠く感じられるんですけど、一番の近道です。それは自分が有言実行してきたので、努力したら報われるとか、努力したら叶うなんてそんな甘くはないのですが。努力は、自分に知らしめるものなので。“ おいお前、なんぼのもんや。”と、常に知らしめるものが努力なんです、僕にとって。休もう、楽をしようと思ったら、もうめちゃくちゃ出来るんですよ。“もう無理。”って言って、楽を掴むことって簡単過ぎるんです。だから、努力を自分に見せつけるというか知らしめる。知らしめた結果、“お前のこの努力じゃまだ足らないだろう。”という自疑の心を絶やしていきながら、努力が一番の近道だって自分が自信を持って言えるのはそこにありますね。それをやったおかげで今があるので、何にもしてなかったら今はありません。」

努力をすれば何だって報われる、なんてことはない。だからこそ、綾野剛は諦めることをしないのだろう。考え、挑戦し続ける。そこにはもちろん、成功が約束されているわけではない。ただ、諦めずに果敢に挑戦し続ける。自分に限界を作らない。だから、彼の今がある。

「もちろん、ダメな時もあります。失敗と成功を繰り返しています。やっぱり、結果が出なかった作品があって、その結果が出ない作品が面白いか面白くないかという評価だと、結果が出なかったということは面白くなかったということです。それは非常に難しい問題で、何を持って面白いになるのか。つまり、一番自分がそこに対して信頼していないとダメですよね。でも、じゃあ面白い作品にしか出ていない役者って面白いですか?全く視聴率をとれなかった役者が次の作品で面白い作品に出ることは当たり前のようにある。ですから、俺は素晴らしい役者というか、それこそスターといわれる人達は、ちゃんと面白いことも面白くないことも、成功も失敗もちゃんと繰り返してきた人なんじゃないかなって個人的には思っています。」

Vol.43 Special Interview Colors of the Heart GO AYANO

成功、失敗、努力、走り続けている人間の確かな言葉。綾野剛のインタビューは、いつまでも聞いていたいほど興味深かった。“努力が一番の近道”と話してくれた綾野剛に、夢や目標を持つということについて最後に力強いメッセージをもらった。

「目標がない、夢がないことを、社会問題化している話をよく聞きますが、なんで社会の問題にするんだろう?と思うんです。夢や目標がないのは、個人の問題であって、社会の問題ではない。それを社会問題とされると、個人の問題というところからどんどん離れていく。そうなると、私達は今の社会のせいでこうなっているんじゃないか?なんていう責任転嫁しだす。そうではなく、夢や目標を持つことは個人の問題だと思っていて、その個人が焦らず時間をかけてゆっくり見つけられる状態をつくってあげるのが社会なんです。ですから、簡単にそれを社会問題と言わずに、ゆっくり探せば良いと思います。変な話、良くも悪くも自分はこの立場になってしまったので、“あなたはその立場にいるからそういうことを、余裕を持って言えるんですよ。”と言われることもひとつ含めた上で話しますと、本当は夢とか目標がないんじゃないんです。あるんですよ、みなさん。それが、やる前から実現できないっていう風に思い込んでしまっていることが、一歩踏み出せないことになっているのではないかと、僕は思っているんです。自分の夢や希望、目標っていうものは、変化して良いんです。向かっている途中で、いかようにも変化するんです。自分は、役者という仕事に一本集中型にたまたま出来ているだけで、一本集中する必要性も別にないですし、目標を決めるまではどんなに悩んでも良いから、どんなに考えても良いから、その時間を費やして“やる!”と決めたら“迷わず進め!”です。何かを信じて。自分しか信じられないなら、自分を信じて進むしかない。もう、すごく根性論みたいな話で申し訳ないんですけど、それしかないと思っているんですよね。」

最後にそう語ってくれた綾野剛の笑顔は、優しさで溢れていた。“人生は人”と話してくれた彼らしい、愛のあるメッセージだ。人間とは、人生とは、生きるとは、そんな問いかけに日々向き合い続け、人を演じ続けるからこその想いが伝わって来た。そして、綾野剛のあのゆるぎない鋭い眼差し。それは、いつだって綾野剛、彼自身に向けられているのだろう。

綾野剛/俳優

1982年1月26日生まれ。2003年俳優デビュー。『Mother』(10/NTV)、2011年NHK朝の連続テレビ小説『カーネーション』で人気を博す。『八重の桜』(13/NHK)で初の大河ドラマ出演。同年『最高の離婚』(CX)で「東京ドラマアウォード 2013」助演男優賞を受賞。2014年には映画『横道世之介』『夏の終り』で「第37回日本アカデミー賞 新人俳優賞」を受賞。主演映画『そこのみにて光輝く』が第38回モントリオール世界映画祭にて最優秀監督賞を受賞、2015年米国アカデミー賞外国語部門の日本代表作品にも選出され、「第88回キネマ旬報ベスト・テン」、「第69回毎日映画コンクール」など数々の映画賞で主演男優賞を受賞している。本作にて6月末から開催される「第15回ニューヨーク・アジア映画祭」にてライジング・スター賞を授賞する。

BRAND NEW MOVIE

『日本で一番悪い奴ら』
6月25日(土)全国ロードショー
出演:綾野剛 、中村獅童、YOUNG DAIS、
植野行雄(デニス)、ピエール瀧ほか
原作:稲葉圭昭「恥さらし 北海道警 悪徳刑事の告白」
   (講談社文庫)
監督:白石和彌 脚本:池上純哉
配給:東映・日活 

北海道警察の新米刑事・諸星要一(綾野剛)は、叩き上げの刑事たちの前で右往左往する毎日をおくっていた。そんな中、署内随一の敏腕刑事・村井(ピエール瀧)から教えられた刑事として認められる唯一の方法、それは【点数】を稼ぐこと。あらゆる罪状が点数別に分類され、熾烈な点数稼ぎに勝利した者だけが組織に生き残る。そのためには裏社会に飛び込み、捜査に協力するスパイ=S(エス)を仲間にし、有利な情報を手に入れろ――。こうして、その教えに従った諸星と、彼の元に集まった3人のSたちとの狂喜と波乱に満ちた生活がはじまった。

ⓒ 2016「日本で一番悪い奴ら」製作委員会