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Special Guest

スペシャルゲスト

Vol.42 FOCUS NOW SAKI AIBU PRETTY WOMAN

Vol.43 FOCUS NOW The Soul of Boy KUDO ASUKA

Photo:Satoshi Miyazawa (D-CORD management) / Photo Manipulator:Satoshi Ozawa, Rika Imai (FIGHT CLUB CO.,LTD)
Hair & Make up:Miwa Itagaki / Styling:Seiko Kawamoto

この映画『夏美のホタル』のお話を頂いたときは、素直に嬉しかったです。同年代の有村架純さんと一緒に仕事が出来ることも嬉しかったですし、廣木監督、小林薫さん、光石研さん、吉行和子さんなど、大先輩とご一緒に仕事が出来る喜びもあって、早く現場に行きたいという思いが強かったです。

僕は有村さんの恋人役の慎吾を演じたのですが、今まで“普通の学生”の役をここまで演じたことがなかったので、僕にとってチャレンジでした。“普通”って一番難しいですよね。プロのカメラマンを目指しているのだけれど、酒蔵の息子で稼業を継ぐか悩んでいるというバックグラウンドがある役なので、台本の中から慎吾のキャラクターを読み取ろうと試行錯誤しながらやっていました。

Vol.43 FOCUS NOW The Soul of Boy KUDO ASUKA

この作品は、家族の愛に溢れている映画で、人と人との繋がりが描かれています。有村さん演じる夏美の、亡くなったお父さんを思い出す時の表情や、吉行さん、光石さん、小林さん、みんなで集まっているシーンの、空気感とか。自然にそこに居るという感じなんですよね。生きているというか。僕自身、一緒に芝居させていただいていて、居心地が良いというのか。皆さんの声が耳にしっかり入ってくるんです。そのシーンでの雰囲気だったり、一瞬の緊張感だったり、ピリッとするような瞬間から生まれるものが凄かったり。客観的に映画を観た時も、人と人の繋がりの温かさが心に響きました。本当にこの作品で、僕は映画というもののスタートラインに立たせてもらったのだなという思いがあります。

役に対する取り組み方や、気持ちを凄く大切にしなきゃいけないのに、どこか頭で考えて、演じている自分がいることを廣木監督が気付かせてくれました。現場では、頭が真っ白になってしまったり(笑)。監督が僕に求めているものに対して、自分が勝手に一方的にどこか決めつけて芝居してしまっていたんだと思います。もっと柔軟に色々な方法があったはずで、そこの答えを自分で導き出せなかったというか、凝り固まったものが自分の中にあった。うまく自分の中では表現できてなかったという思いを経験しました。ですので、悔しい部分は凄く大きいです。正直、今までで一番悔しかった現場です。でも、一番出逢えて良かったなと思えた現場でした。本当に自分の役者としての弱点を明確に教えて頂いたように思っています。

慎吾という役は、将来進むべき道に悩む学生でしたが、この作品には本当に人生を変えてくれるような言葉が出てきます。自分自身も挫折を経験したことがあるのですが、役者の道に入る前、将来について迷っている時に、僕の父が言ってくれた言葉があります。“お前も二十歳になって、社会に出て行くんだから、自分で自分の人生を決めろ。”この言葉には、いろんなものが含まれていたんですねきっと。父なりに凄く、僕のことを見てくれていたんだなと後々分かったんです。僕が役者をやりたくて沸々しているのを見抜いていたんですよね。そのタイミングだったからその一言を言ってくれたんだと思います。“お前が本気でやりたいことだったら、誰も止めない。”って。“生半可な覚悟でやるのだけは許さない。”と言ってくれたのを、凄く覚えています。それが父親の大きさで、家族が繋がっているのだと思います。

Vol.43 FOCUS NOW The Soul of Boy KUDO ASUKA

僕が覚悟を決めてからは、本当に好きなお仕事をさせて頂いているので、覚悟が揺らぐことはないです。色々な人と出逢って、機会を頂いて、日々かけがえのない時間を頂いています。自分自身、とても恵まれているなって思います。家族や友達、スタッフのみなさんがサポートしてくださる中での運だと思っています。でもそこに甘えてはいけないとも思います。まずは自分が思うように動いて、自分の直感も信じて、ぶれずに生きて、それで駄目だったら駄目ですけどね(笑)。

僕は、役者の仕事を通して“伝えたい、伝えなきゃ。”という思いが凄くあります。例えば、今、僕らの世代は、とても平和に生活できている。僕らは戦争を知らないですし、知識も学ぶ場所も少ないです。だからこそ、発信できる立場の僕らが少しでも良いから、次の世代に伝えるべきことを、知ってもらうことを、興味を持ってもらうことから始められたらと思います。忘れてはいけないという思いが強いのかもしれません。そして役者という仕事は、自分にないものを演じられます。時々、芝居をしていて記憶がなくなっていることがあるんです。“はい、カット!”と声がかかった瞬間に、“あれ?どうしてたっけ?”という時があって、でも後々、思い返してみると“あ!そう言えばこういう感じだった!”と思い返すことがあるくらい。もしかしたら違う自分になれているのかもしれないですけど。他人の人生を演じられることは、とにかく楽しいです。

そう言ったこともありますが、一方で、役者として誰かの何かのきっかけになれることは嬉しいです。誰かが、笑顔になるでも、感動してくれるでも良いし。例えば、消防士の役を演じていて“消防士になりたいって思いました!”とか、どんなことでも良いんで、誰かの何かのきっかけになれたら嬉しいですね。

これからも、僕が出逢いの中で手を差し伸べてもらったことを、下の世代の人達、今度は他の人達に返す。それが手を差し伸べてくれた方への、恩返しになるんじゃないのかと思っています。

BRAND NEW MOVIE

夏美のホタル
2016年6月11日(土)全国ロードショー
出演:有村架純 工藤阿須加 淵上泰史 村上虹郎
   中村優子 小林薫 光石研 吉行和子
監督:廣木隆一 / 脚本:片岡翔、港岳彦
原作:森沢明夫「夏美のホタル」(角川文庫刊)
主題歌:Uru「星の中の君」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
企画:プロジェクト ドーン / 配給:イオンエンターテイメント

有村架純が、「ストロボ・エッジ」の廣木隆一監督と再タッグを組んだ最新作。原作は「津軽百年食堂」「虹の岬の喫茶店」などの著者、森沢明夫の同名小説。写真家志望の主人公、夏美が亡き父の形見であるバイクに乗り、かつて父と一緒に見たホタルを探しに森にやってくる。そこでよろず屋「たけ屋」を営むヤスばあちゃんと通称・地蔵さんという老親子と知り合った夏美は、2人に自然の中での暮らしを教わり、楽しいひと夏を過ごす。そんなある日、地蔵さんには別れた家族とのつらい過去があることを知る。親子、夫婦、家族、友達。誰かを大切に想う事が、夏美の心を少しずつ癒していく。まるでホタルの淡い灯火のように――。

ⓒ 2016「夏美のホタル」製作委員会