TOPスペシャルゲスト > vol.33-1 堀北真希インタビュー

Special Guest

スペシャルゲスト

Vol.33 Vol.33 Special Interview Be Only One MAKI HORIKITA

MAKI HORIKITA

Photo Tomokazu Sasaki (nomadica) Hair & Make up SAKURA (Allure) Styling Naomi Banba

Dramatic Life

「長かった…です。色々なことが。この先の人生で、この10年ほど濃い人生は無いのじゃないかな、と思います。」

今年でデビュー11年になる女優 堀北真希は、これまでの10年間の印象をそう語った。凛とした美しさ、撮影現場を圧倒する存在感。26歳という若さで、場の空気を一瞬にして彼女のものにしてしまう、そんな堀北真希から、印象的な答えが返ってきた。20代半ばで、これまでの10年ほど濃い人生は、この先の人生にもう無いと言い切れるということ。
インタビューでは常に的確な言葉で、思いを伝える堀北真希の言葉の中で、計り知れない経験を積んできたことを意味しているような、熱が伝わる答えだった。

それもそのはず、彼女は中学2年生の夏、部活帰りのジャージ姿でスカウトされ、芸能活動をスタートした頃は、この世界に興味はあまりなく、女優になりたいというような前向きな思いは無かったと言う。
「ちょっと映画のオーディションの話があるから行ってみたら?と言われて、行ったんですけれども。
それが『COSMIC RESCUE』という映画で受かって役を頂いたのですが、オーディションに合格した時は、大泣きしました。嫌で。
絶対受かるわけ無いからと言われたからオーディションに行ったのですが、まさか、有り難いことに役を頂いたので、大泣きをして事務所から帰った覚えがあります。」
笑みを浮かべながら、デビュー当時の思いを語ってくれた。

「十代の頃はお仕事なんですけれども、お仕事と強く思えたのは、20歳過ぎてからだったので、それまでは本当に生活の一部じゃないけれども、学校へ行き、部活にも出て、お仕事をしていた日々を送っていました。
でも、これが私の職業なんだと思った20歳頃から、本当に色々な出会いがあり、凄く素敵なお仕事だなって思います。
毎回、色々な人との出会いもあるし、時代の設定が違う役で、歴史を学んだり、特殊なことを学んだりしながら経験できるので。色々な意味で幅広いですよね。色々な場所にも行きますし、発見もありますし。
私は学生の頃からこのお仕事をしているので、アルバイトや他のお仕事の経験がありません。ですから、本当に他のお仕事と比べようがありませんが、自分が女優のお仕事をしていないで生きているよりも、かなり世界観は広がっているだろうと思います。」

大泣きから始まった女優という仕事について、濃い10年だったと言う言葉の意味。それは、沢山の出会い、役を通して知識を得る、学ぶことができたからなのだろう。
とは言え、十代の頃は、学業との両立。その頃の自分を凄く完璧主義な人だったと語る堀北真希は、勉強や部活を中途半端にしているような気がして嫌だったと言う。

「でも、バランスを取るために、途中から完璧でいることを諦めました。
まずは自分で目標を設定して、ここだけはと言うところを達成できたら、それで良しとしようと思いました。頑張ったねと自分に言ってあげようと決めました。高校生の時は、卒業をすることを目標にしていました。
昔は結構きっちりしていましたね。今は昔より、自分ではゆるい感じで生きているんですけれども。結構、0か100かみたいな人なんですよ(笑)。それが良い時もあるし、良くない時もあるので、もう少しちょうど良いところを学びたいですけれどもね。
私は一度決めたことを、途中で曲げられないんですよ。良いことっぽいんですけれども、やっぱり、環境が変わったりする時もあるし、いつもそれではダメだなって思うんですよね。
ですから今では、人の意見を聞いたりするようにはしていますね。
この性格は、母に似ているのかな。私の母は、一度決めたことは揺るがないので、完全に受け継いでいると思います。」

MAKI HORIKIRA

自身についてそう分析している彼女が大役を務めたこの秋公開の時代劇映画『蜩ノ記(ひぐらしのき)』。黒澤明監督の愛弟子、小泉堯史監督から堀北真希だからこそ演じられる役所としてオファーを受けた。江戸時代の日本人の美しき礼節と絆を描くこの感涙のヒューマンドラマでは、その時代を生きた人達のように演じるために、彼女は撮影前から所作のお稽古、礼儀作法を徹底的に学んだという。

「この作品に参加させて頂けて、とても幸せだったなと思います。この作品の中には、毎日をとても丁寧に大事に生きている人達の姿が描かれていますが、私も一つ一つのことを丁寧に、気をつけて演じました。
私生活の中でも、物を置くだけでも、ちゃんと静かに置いたり、力の加減に気をつけています。
私は何でも自分の手でやることが好きで、お料理やお掃除も、便利に簡単にできる物を使うのではなく、自分の手を動かして確かめたいのですよね。
これはこのくらいの硬さなんだとか、これはこんなに力を入れたら崩れてしまう物なんだとか、柔らかさや重みを感じて生活したいんです。
本屋さんで本を買って、その本の重みを持ち歩くことなど、物を感じ、大事にしたいと思うところがありますね。」

彼女の私生活での視点からも、小泉監督が、佇まいが美しく、姿、話し言葉に美しさがあると彼女に注目したことがよくわかる。そして彼女の考え方、視点にもその凛とした心のあり方を感じさせる。

「この作品では、夫婦の愛、家族の愛、初めての恋、師弟の愛が描かれていますが、家族で支え合って生きている姿や、夫婦の心の通じ合いは、本当に素敵だと思いました。礼節や絆を重んじる時代における「愛」。
皆家族でも、同じ地域に住んでいる人達でも凄く助け合って生きていて、団結して乗り越えていこうということは、何か良いなと思いました。
今って結構やろうと思えば、一人でわりと何でもできると言うか、一人で情報を集めることも簡単にできますよね。一人の力でもできてしまうような時代で、それは良いことなんでしょうけれども、でも、自分の無力さとか、不甲斐なさとか、そういったものを感じながら人に助けてもらい、生きていくことは凄く素敵だなって思いました。
そして、この作品の時代は、本当に命を懸けて生きていると思います。礼節をきちんと守りながら生きているのですが、それでもやっぱり納得のいかない部分がある人間らしさ。」

演じることで、江戸時代を生きてきたかのように、観てきたかのように、歴史の中に日本の美しさを見つけている。
彼女は、今回の時代劇について、台本を読んで、どんなしゃべり方をするかなどイメージを膨らませたりはしたが、最終的には、現場で決めようと思っていたと言う。

「あんまり事前に自分で固めて決めて行かないようにしていますね。実際に作品になるのは、現場でやったことですし、結構自分だけの解釈で台本を読んで行っても、監督が思っているものや、他の役者さんが思っているものが、自分と違ったりときどき、そういうこともあるので。」
堀北真希にとって、演じることは、その役を生きること。
だからこそ、撮影の現場、本番こそが役に命を吹き込む瞬間なのだ。

「女優のお仕事を通して気づいたことは、自分自身のことって意外と知らないというか。お仕事を始めるまでは、自分が思っていた自分と、人が自分を見た時の自分って違ったりもするし。
見た目とかも、そんな普通に生活をしていたら、自分の姿はあまり見ませんよね。けれど、今は色々な角度から、色々な自分を嫌でも見るので、だから何か自分について考えますし、自分についての発見が意外と一番大きいです。
人からは、結構大人しそうに見られたり、ふわっとしていそうに見られたり、家では読書をしていそうとか言われるのですけども(笑)。そういった印象については、結構最初の頃は意外でした。性格的にはスポーツをしたり、アクティブなタイプだったので、人にそう言われて、人からの見え方は違うのだなと思いました。」

そんな彼女が目指す女優像はと尋ねると、
「やっぱり現場に女優さんが来ると、現場がふわっとこう明るくなって、皆がちょっとその女優さんが来てくれて嬉しくなるというか、そういう方ってやっぱりいらっしゃるんですよね。今回の映画でご一緒した原田美枝子さんも、とっても笑顔が素敵な方で。だけれども、スタッフの方との信頼感も凄くあって、そういう女優さんが素敵だなって思いますね。」
そう答える堀北真希も、すでに現場の空気を変えるオーラを放っている。

「女優というお仕事は、誰か喜んでくれる人がいるっていうことが自分にとって一番大きいですよね。誰も喜んでくれる人がいなかったら、多分やらないと思うし。応援してくれたり、楽しみにしてくれている、待っていてくれるファンの人とか、そういう人達がいるっていう事が大きいですね。」
演じるということは、必ず観てくれる人がいるということ。喜んでくれる人がいることは、彼女にとって最高の喜びであり活力なのだろう。